射出成形の糸引きの原因は?糸引き対策8選を紹介!

射出成形

射出成形で必要なものって、割と高いですよね。

金型ひとつとっても、高価なものだと数百万円とかしますし、射出成形機だって数千万です。

作業者としては物を作ることも大事ですが、それと同じくらい「壊さないこと」も重要ですね。

成形不良の中には金型の損傷につながる不良もあるんです。

それが、糸引きです。

この記事では、射出成形の糸引きについて、原因や対策を解説していきます。

射出成形の糸引きの原因

先に結論からお伝えすると、糸引きの原因はノズル温度が高すぎて樹脂が固化しきらないことです。

射出成形における糸引きとは、型開きをしたときに、糸を引くようにスプルーから固まりきらなかった樹脂が伸びてしまう不良のことです。

納豆混ぜた箸を上に引き上げると、ネバーッと伸びますよね。

あんな感じです、糸引き納豆って言葉もあるくらいですし。

ノズル温度が高すぎることで、型開きまでに固化しきることができずに伸びてしまうのです。

糸引きが起こると、糸状に伸びてしまった樹脂が成形品や金型についてしまうことがあります。

成形品についていえば、冷え固まって付着してしまい、外観不良になることがあります。

それだけならまだしも、金型に付着して巻き込んでしまったら金型を傷つけてしまう恐れがあります。

スプルー側に樹脂が残っていたら、次のショットで残った樹脂が転写されて不良になることもあります。

このように、その後のショットや設備にも悪影響が懸念される不良ですので、発生させないように対策をしておきましょう。

射出成形の糸引き対策8選

それでは、具体的な対策を紹介していきます。

原因が「ノズル温度が高くて樹脂が固化しきらないこと」なので、いかにして樹脂の固化をさせるかという考え方での対策となります。

ノズル温度を下げる

糸引きの対策で最もメジャー、かつ、シンプルな対策ですね。

ノズル温度が高くて樹脂が固化しないのですから、下げればいい、というわけです。

目安として、5度ずつ下げて様子をみていきましょう。

一気に下げてしまい、ノズルで固化が始まっては故障につながりかねませんので。

また、ただ下げればいいというわけでもありません。

成形の品質に影響する部分でもあるので、品質の確認を忘れないで行いましょう。

冷却時間をのばす

こちらもシンプルな考え方です。

固化しないなら、固化するまで待てばいいじゃないか、という考え方ですね。

考え方としては問題ないのですが、サイクルタイムを考慮しなければいけません。

量産を考えた時は1個当たりの成形時間がコストや生産できる量に影響を与えます。

ですので、サイクルタイムが長くなりすぎないように気を付けましょう。

サックバック(デコンプ)を引く

サックバック、デコンプに関してはこちらの記事でも紹介しています。

射出成形のデコンプとは?関連する不良やその対策も解説!
この記事では射出成形のデコンプについて解説しています。デコンプとは何か、から始まり、デコンプに関して生じる不良やその対策についても紹介しています。

サックバック量、デコンプ量を増やすということです。

糸引き対策としては確かに有効ですが、気を付けなければならないことがあります。

それは、エア巻き込みが起こらないようにすることです。

糸引き対策でエア巻き込みが起こって別の不良が出てしまっては、仕事が進みませんからね。

エア巻き込みはシルバーストリーク(銀条)等の不良の原因にもなります。

こちらの記事では、エア巻き込みに着目して紹介していますので、ぜひ合わせてごらんください。

射出成形でエア巻き込みが起こるとどうなる?対策も紹介!
この記事では、射出成形のエア巻き込みについて解説しています。エア巻き込みの発生メカニズムやそれで起こる不良とその対策も解説しています。ぜひご参考に!

サックバック量、デコンプ量の目安はスクリュー径の10分の1程度です。

ノズル径のサイズ変更

ノズル径が樹脂に対して適当でない場合、糸引きが起きやすくなります。

なので、ノズル径を変更することで糸引きを対策できる場合があります。

背圧の確認

背圧をかけすぎている場合も糸引きにつながりやすいです。

グッと樹脂を押し込んでいるような状態ですが、それが強すぎればあふれ出てくるイメージはしやすいと思います。

ですので、適正な背圧が加わっているかを確認しましょう。

サックバック(デコンプ)のタイミングを型開き直前にする

型開きの時にスクリューを下げれば、その分糸引きは起きにくくなります。

あふれ出そうなタイミングでスクリューを下げるわけですから、その分ゆとりがうまれ、糸引きが起こりにくくなります。

設定方法は機種によって異なりますが、「計量遅延」や「サックバック遅延」等の項目で調整できます。

スプルーブッシュを糸引き対策の機構があるものを使う

スプルーブッシュとは、金型の中で一番最初に樹脂が流れる部分を指します。

ここに糸引き防止機能がついているものが販売されています。

初期費用は掛かりますが、こういったパーツに取り換えることも糸引き対策になります。

糸引き防止キャップを使う

こちらも追加で物を購入する必要がありますが、ノズル先端に糸引きキャップと呼ばれるものを取り付けることです。

これを用いることで樹脂と金型のタッチ部の体積を減らし、固化しやすくしようという発想です。

固化する体積が、すべてを冷却させるまでの時間が短くて済みそうなのは想像しやすいですね。

まとめ

今回は糸引きにフォーカスして紹介しました。

糸引きは、そのショットだけでなく、金型や次のショットにも悪影響を与えかねないので、きちんと対策をしましょう。

対策としては、

  1. ノズル温度を下げる
  2. 冷却時間を延ばす
  3. サックバック(デコンプ)を引く
  4. ノズル径のサイズ変更
  5. 背圧確認
  6. サックバック(デコンプ)のタイミングを型開き直前にする
  7. スプルーブッシュを糸引き対策機構のあるものにする
  8. 糸引き防止キャップを使う

の8つです。

不良を出す経験も重要ですが、ほどほどにして良品を短時間で作れるようにお互いスキルアップを目指しましょう!

タイトルとURLをコピーしました