日本では電動の射出成形機が多くなっているようです。多くの方が、電子パネルやパソコンで成形条件の設定や結果のモニタリングをされていると思います。
そこでクッション量に関して気になったことはないでしょうか?
最小クッション量がばらつく、ということがあります。
クッション量がばらついた、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、射出成形のクッション量のばらつきをテーマに成形を考えるきっかけとして読んでいただければと思います。
射出成形のクッション用と最小クッション量
まず、前提として「クッション量」と「最小クッション量」について認識をそろえましょう。
というのも、作業者やテキストによっては、クッション量という言葉でない場合もあるからです。
クッション量とは
クッション量とは、金型に必要量の樹脂を射出したときにスクリューが前進した位置です。
これは設定値になります。
計量値とクッション量を設定するので、ここはその通りになります。
例えば、計量値が30 mmでクッション量が10 mmだとすると、スクリューの位置はノズル先端から30 mmの位置から始まり、20 mm前進して、クッション量として設定された10 mmの位置まで進みます。
その後、保圧の工程に入ります。
このように、スクリューがどこまで前進するかを示したものです。
クッション量はほかにも、クッション値や前進位置とよばれることもありますが、この記事ではクッション量で統一します。
最小クッション量とは
最小クッション量は設定値ではありません。
クッション量までスクリューが前進した後は保圧の工程に入ります。
樹脂を射出した後に、ぐっと圧力をかける工程です。
このとき、きちんと金型内に樹脂を充填させるために多少前進することがあります。
このように前進した結果、一番前進したところはノズル先端からカウントしてどこまでか、というのが最小クッション量です。
設定値ではないため、この値はばらつく可能性があります。
最小クッション量は最小クッション値や最前進位置とも呼ばれることがあります。
この記事では、これらを指す場合は最小クッション量で統一します。
射出成形で最小クッション量がばらつく原因
ばらつきを考える場合は最小クッション量で考えてください。
クッション量がばらつく場合は、成形機に問題がある可能性もあるので、メーカーに問い合わせることをお勧めします。
最小クッション量のばらつきは射出側と金型側、成形条件で考えられます。
射出側が原因で最小クッション量がばらつく可能性
射出側が原因で最小ばらつく場合は、原料の比率、ヒーターの消耗、計量密度、外気温などが考えられます。
複数挙げましたが、要するに「完全に同じものを再現することが難しい」ということです。
例えば、「水を100 mL計量する」ということを試みたとして、今日と明日では厳密にすべてを同じにすることはできません。
気温が微妙に違えば、それで密度がわずかに変わるので100 mL計量しても重さが違う、といったイメージです。
ただ、「だからあきらめましょう」ではありません。ばらつきの原因を想定し、管理できるようにすることが重要です。
作業環境や使う装置、樹脂によっても大きく変わります。
なので、何を目的にするか、どのパラメーターの影響が大きいか、どういったことを意識すればいいかを考える指標として、ばらつきの要因にはどういったものがあるかを整理しておきましょう。
金型側が原因で最小クッション量がばらつく可能性
金型側が原因で最小クッション量にばらつきが生じる場合は、冷却能力や温調機の消耗などが考えられます。
射出側同様、可能性を把握しておくということが大切ではありますが、射出側とは違った側面もあります。
それは、実際に手を加えることができる可能性が多いに残っていることです。
例えば、金型の構造上、冷却能力に大きな差が生じてしまうのであれば、生じにくい構造に改善したり、温調機の消耗に関してはメンテナンスや新調したりすることで対応可能です。
問題を切り分けるために、ばらつき要因の可能性は把握しておきましょう。
成形条件が原因で最小クッション量がばらつく可能性
成形条件が原因で最小クッション量がばらつくのであれば比較的制御しやすいです。
可能性として大きいのは、射出速度が速すぎることや背圧が弱すぎることが挙げられます。
射出速度が速すぎる場合は、勢いよく樹脂が金型に流れ込みますが、そのあと金型に入りすぎて金型からあふれ出ようとしてスクリューを押し返す力が大きくなってしまう可能性が考えられます。
そうすると、最小クッション量はばらついてしまいます。
同様な考え方で、背圧が弱すぎても同様なことが生じる可能性があります。
射出速度が適正でも、最後にぐっと押し込む力が弱すぎれば、押し負けてスクリューが押し戻されてしまいます。
そうなればやはり最小クッション量のばらつきは大きくなってしまいます。
射出成形で最小クッション量を監視する目的
樹脂や成形機、成形環境によっても変わってくるので、一概に最小クッション量のばらつきがいくつであればOKとは言いにくい部分がありますが、とりあえず±0.2 mm以内を目指してみるのがいいと思います。
しかし、目的を見失ってはいけません。
最小クッション量を監視する目的、クッション量を考える目的は合否判定目安にするという木庭があります。
クッション量は通常5 mmや8 mmといった値を設定しておきます。
これは、保圧の工程でぐっと押し込むためです。
この時、樹脂が出きってしまった場合、つまり、スクリュー先端がこれ以上前進できなかった場合、最後にもう一歩樹脂を押し込む必要があるのに押し込めないといった状態になり、成形品が安定しないことがあります。
保圧をかける時も若干スクリューが前進していることを考えると、その分の樹脂も成形品には必要ということです。
ですので、最小クッション量がばらつくということは製品の成形で使用した樹脂の量が異なるということです。
こうなると、再現性という点で危ういです。
ですので、最小クッション量を監視するのは、成形品の品質を管理するための目安として活用してほしい数値です。
最小クッション量が大きな値=成形品で使用した樹脂が少ない
最小クッション量が小さな値=成形品で使用した樹脂が多い
ということです。
なので、品質管理の指標として活用してみてください。
まとめ
この記事では、射出成形の最小クッション量のばらつきについて紹介しました。
最小クッション量という意味ではばらつきの完全な管理は難しいかもしれません。
しかし、どこでばらつきが発生し、どこを管理すべきかを考えられるようにはなっておくべきです。
そのうえで、なぜ最小クッション量を監視するのか、という目的を忘れないようにしましょう。