射出成形で生じる残留応力の対策解説!原因や不良も紹介!

射出成形

射出成形は樹脂をホッパーに入れてから金型が開いて成形品を取り出すまで、全く中が見えないブラックボックス状態です。

成形機の中で何が起こっているかわからないのは射出成形の難しいところの一つですよね。それだけでなく、成形品を取り出しても見えないものがありますよね。

そうです、残留応力です。

この記事では射出成形で生じる残留応力の対策について、原因や考えられる不良もあわせて紹介します。

射出成形で残留応力が生じる原因

射出成形で生じる残留応力の対策は主に3つです。

  1. 成形条件、主に射出圧力や背圧を下げる
  2. 金型と樹脂との摩擦抵抗を減らす
  3. 成形品をアニーリングする

これらについて掘り下げていく前に、残留応力について整理しておきましょう。

いいですか、原因と結果の減少だけでなく、それをつなぐ理論、つまり「年でそうなるの?」の部分も整理しておきましょう。

残留応力とは

射出成形で生じる残留応力とは、成形の過程で生じた応力がそのまま残ってしまうことです。

金型から取り外しているので外力はかかっていないはずですが、成形の段階でかかった応力がそのまま残っちゃっているんです。

ですから、何も力はかけてないけど、力がかかっているという状態です。

射出成形の場合は、強い圧力をかけているので圧縮するときに作用する圧縮応力や引っ張られることで生じる引っ張り応力が残留応力の元ネタになっています。

ちなみにですが、樹脂にかかる圧力は20~50 MPaほどになるそうです。

私たちが生活している地球上は1気圧です。大体0.1 MPaです。

なので、樹脂にかかる圧力はその200倍~500倍ほどということになります。なかなかに過酷ですよね。

残留応力は時間の経過や熱の影響で少しずつ開放されたり、急に解放されたりします。

残留応力が生じる原因

なぜ残留応力が生じるかというと、これには諸説あります。

しかし、どれが正しいというよりも、これらが複合的に組み合わさっていると考える方が実際の状態に近いと思います。

圧力の不均一さ

ゲートの位置を考えると、たとえシンプルな形状の平板であったとしても、厳密に同じ圧力をかけることはできません。それが複雑な形状となればなおさらです。

このような圧力の不均一さが残留応力を生じる原因になります。

樹脂が流れにくいところにまでしっかりと流すために、圧力をかけることになるので、流れやすいところとそうでないところで圧力差が生じる原因になるのはイメージしやすいと思います。

特に、ゲート近傍や成形品の薄肉部で生じやすいです。

肉厚の不均一さ

前述の圧力にも関連するのですが、成形品の肉厚が違うとかかる圧力も変わってきます。

スキン層の存在を考えると理解しやすいですね。

それだけでなく、成形品の収縮率が異なったり、圧力の伝播の仕方が変わったり、適切な冷却時間が異なったりすることも残留応力が生じる原因になります。

樹脂の配向

樹脂の成分がどう並ぶかというのも残留応力の原因になります。

配向によって収縮状態に不均等さが生じるので、この収縮の仕方の差によって残留応力が生じてしまうんです。

小さくなろうとしているところに引っ張られちゃうイメージです。

射出圧力が過大

射出圧力が過大だと、必要以上の圧力で樹脂を押し込むことになり、当然余計な圧力が樹脂にかかってしまいます。

その圧力が残ってしまい、残留応力となってしまいます。

離型システムが不適切

金型が開いて、エジェクタピン(突き出しピン)で製品を突き出すことで金型から剝がします。

これを離型といいますよね。

この離型のシステムが不適切、例えば力が均等にかかっていないなど、そういったことが原因で残留応力が生じてしまいます。

充填ムラ

射出圧力や肉厚にも関連しますが、樹脂の充填のされ方にムラがあっても残留応力につながります。

樹脂ががっつり充填されているところと、そうでもないところがあると圧力差が生じてしまいます。

超満員電車に乗っている人のストレス具合と座れる席がたくさんある電車に乗っている人のストレス具合、みたいなイメージですね(笑)

射出成形で残留応力によって起こる不良

続いて、残留応力で生じる可能性のある不良を2つ紹介します。

不良自体が複合的な要素で発生するので、残留応力が関係あるのはこの2つだけというわけではありませんのでそのつもりでいてください。

あくまでの残留応力が主な原因となる不良です。

クレイズ(クレージング)やクラック

クラックとは、表面に生じる割れやヒビのことです。

細い筋状になることが多いと思います。

クレイズ(クレージング)はクラックの前駆体、つまりクラックの前段階、クラックの子供のようなイメージです。

これらは、射出圧力が高すぎる場合か背圧が高すぎ場合で発生するケースが多いです。

そり、変形

文字通り、成形品がそったり変形したりする不良です。

原因としては、樹脂の圧力の不均一さや圧力の不均一さによるところが大きいです。

また、そりは残留応力以外にも、冷却時に収縮しすぎて生じるケースもあります。

射出成形の残留応力対策

冒頭で残留応力の対策を3つ紹介しましたが、原因や不良を整理できたところで、具体的な対策方法を掘り下げていきましょう。

成形条件、主に射出圧力や背圧を下げる

クラックの発生のところでも紹介しましたが、射出圧力や背圧が高すぎることで生じてしまうので、そこを下げてあげようということです。

下げつつ様子を見るのが最初に打つ手としてはおすすめですね。

ちなみに、射出速度を多段切替にするなど、圧力の集中を回避できる手も試してみるのもありですね。

これは原因・理論をわかっていないとできないので、ぜひそこまで整理するようにしてください。

金型と樹脂との摩擦抵抗を減らす

方法は様々ですが、樹脂と金型の摩擦抵抗が大きすぎるとそれだけ樹脂に余分な圧力がかかってしまいます。

金型に手を加える必要があるので、最優先でとる手段ではありませんが、余分な圧力をかけないために抵抗を下げるのも有効な手の一つです。

成形品をアニーリングする

最後はアニーリング(焼きなまし)することです。これは前述の2つとは考え方が異なります。

上記2つの方法は「残留応力を何とかして減らそう」という考え方です。

それに対してアニーリングは「製品として使う前に残留応力を開放してしまおう」という考え方です。

製品として使っている最中にじわじわ残留応力の影響が出て、変形や亀裂、割れなどが起こると大問題です。

ですので、最初から残留応力は生じるものとし、あとからそれを取り除こういうわけです。

実際の処理としては、一言でいえば、熱をかけて徐冷するというシンプルなものです。

結晶性の樹脂であればガラス転移点以上で、かつ、想定される使用温度よりも10~30℃程度高い条件でアニールします。

非晶性の樹脂であれば、ガラス転移点よりも20℃程度低い温度で行います。

良くも悪くも熱をかけるので、樹脂に負担はかかってしまいます。

アニーリングを採用する前には十分にその他の物性の評価も忘れないようにしてください。

まとめ

今回は、射出成形で生じる残留応力の対策について、原因や不良を踏まえた視点で解説しました。

残留応力は目に見えないので、その分評価が難しいです。

しかし、後々成形品の不良が発生すると大問題になりかねないので、十分に対策を施すようにしてください。

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