射出成形でシルバー発生のメカニズムを解説!対策には空気に注目!

射出成形

射出成形業務に携わる皆さん、毎日お疲れ様です!

毎日様々な不良と戦う日々が続いているかと思います。

不良対策で必要なのは、なんとなくの対策ではなく、メカニズムを理解した上での対策になります。

こうなるからこういう対策をつる、といったように理屈がわかったうえでの対策でなければ意味を成しません。

というか、仮に解決してもなぜ解決したかもわからないですよね。

今回はシルバーです。

この記事では、射出成形のシルバー発生のメカニズムを解説していきます。

ぜひきちんとした理解の上で効率よく業務をこなしていきましょう。

射出成形のシルバー発生メカニズム解説

シルバーと表記していますが、銀条やシルバーストリークとも呼ばれますね。

今記事ではシルバーで統一しますが、同じものです。

シルバーとは、筋状のキラキラしたものが成形品の表面に現れてしまう外観不良です。

なぜ、筋状のものが表れるかを解説していきます。

結論は、表面で空気が引き延ばされるからです。

これを頭に入れて読み進めていただければかなり理解がしやすくなります。

シルバー発生のメカニズム

先ほどもお伝えしたように一言で言えば、「空気が引き延ばされること」が原因です。

詳しく見ていきましょう。

まず、前提として成形が完了するまでの間に空気が巻き込まれるか発生するかしなければシルバーは発生しないので、何かしらの理由で空気が入ったとしてください。

空気がどこから入るんだ、と思うかと思います。

技術者として、すばらしい着眼点ですが、後述しますので、いったん空気があるとしてください。

その空気が樹脂の流れに乗って、表面に現れ、それが引き延ばされて筋状の模様が現れます。

基本的にはこれが発生メカニズムとなりますが、より深く理解するために、樹脂の流れを確認していきましょう。

樹脂の流れ

樹脂の流れの最前線、最先端を考えましょう。

電車の先頭車両です。

この流れですが、断面を考えてみてください。

上下は金型に触れているので固化が進行しています。

このように金型表面に触れて固化した薄い層をスキン層といいます。

樹脂が流れている、と表現していても上下は固化したスキン層で挟まれ、スキン層に挟まれた樹脂だけが溶けて流れていることになります。

では、どのように樹脂が流れるかというと、溶融している樹脂が中央から湧き出るようにして流れています。

これをファウンテンフローといいます。

空気が樹脂の内部に入るとそれがファウンテンフローに乗っかって流れ、スキン層まで移動します。

スキン層に移動したら、樹脂が固化しているため、空気の一部分が固定されます。

そうすると空気の一部が固定されているが、流れは発生している状態となるので、その空気が引き延ばされることになります。

これがシルバー発生のメカニズムです。

シルバー発生のメカニズムまとめ

基本的なイメージをつかんでいただくために少し長く書いてしまったので、シルバー発生のメカニズムをまとめます。

  1. 成形中に空気の巻き込みまたは発生
  2. 樹脂の流れに乗って移動ファウンテンフローによりスキン層に移動
  3. 空気の一部が固定される
  4. 一部固定されているが樹脂の流れに乗っているため引き延ばされる
  5. シルバーになる

といった流れになります。

射出成形でシルバー発生の原因を細分化

それでは、前述したようにどのタイミングで空気が発生するかをまとめていきましょう。

それぞれの対策も紹介していきます。

樹脂に含まれる水分

樹脂の乾燥不足がおもな原因になります。

水分が含まれるとそれがシリンダー内で空気となります。

これ以外にも、ホッパーに入る直前やホッパー下の温度が低すぎることでも空気の巻き込みの原因になりかねません。

こういった細かいところにも注意が必要です。

対策は、十分な乾燥、ホッパーまでのハンドリング、ホッパー下の温度を調整することが挙げられます。

滞留による熱分解

滞留時間が長いと、その分熱を与えられている状態になります。

それは樹脂にとっては過酷な環境で、どんどん熱分解してしまい、ガスを発生させてしまうことがあります。

というか、シルバー以前に滞留には十分気を付けてください。

スクリューの故障にもつながるので…。

対策としては、滞留時間を短くすることです。

より具体的には、サイクルタイムを短くしたり、小さな成形機を使用したりすることですね。

金型での空気の巻き込み

金型の構造上、発生しやすい部分があります。

例えば、段差や曲がり角のような部分です。

樹脂が回り込んだり流れが変わったりするときに、その角に空気がたまってしまうことがあります。

対策としては、金型の再加工か速度の多段切替です。

再加工は、段差等をなだらかなスロープ状にする等で空気がたまりにくくすることです。

速度の多段切替は、その場所だけ速度が遅くなるように設定し、ゆっくり流すことです。

こうすることで空気が入り込む要因を減らせます。

サックバック(デコンプ)による空気の巻き込み

鼻たれや糸引き対策でサックバック量を増やすことはありますが、やりすぎると空気が巻き込まれます。

サックバック量が小さすぎれば糸引きや鼻たれの原因に、多すぎれば空気の巻き込みの原因になりますので、適正なサックバック量に設定してください。

目安は、スクリュー径の10分の1程度です。

スクリューによる空気の巻き込み

スクリューの回転が速すぎるとこれが発生します。

樹脂はヒーターで溶けていると考えがちですが、実は違います。

スクリューの回転でのせん断発熱が主な原因です。

回転数が速すぎるとせん断発熱が起こりすぎて樹脂が高温になりすぎてしまいます。

こうなると、滞留時間が長かった時のように熱分解が進む方向に進んでしまいます。

しかし、ゆっくりしすぎるとそれはそれでシンプルに滞留時間が長くなるのでよくないです。

樹脂によっても異なりますが、適正な回転数で成形するようにしましょう。

まとめ

今回は射出成形でのシルバー発生のメカニズムを解説しました。

巻き込まれたか発生した空気が樹脂によって流れ、ファウンテンフローによってスキン層まで運ばれ、それが引き延ばされることでシルバーとなります。

注意すべきと事は、樹脂の持つ水分、滞留時間、金型の構造、サックバック量、スクリュー回転数ですね。

きちんと原因を切り分けて対策をしていきましょう。

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