射出成形のキャビ取られ対策9選!

射出成形

射出成形に携わっていると、いろいろな不良に出会いますよね。

私は、先日の成形業務で周辺機器のトラブルに遭遇しました。それだけでなく、ただの平板にもかかわらず、キャビ取られも起こりました。

金型や成形品の設計上、キャビ取られは全く想定していなかったので驚きました。

この記事では、キャビ取られの対策を9つ紹介します。

射出成形のキャビ取られ対策9選

他の不良と同様に、キャビ取られが起こる原因も多岐にわたります。そのため、対策も複数存在します。

先に結論からお伝えすると、

  1. PLをキャビ側に寄せる
  2. 成形品のコア側の溝を深くする
  3. リブをコア側につける
  4. キャビ側にスプリングを入れる
  5. 可動側の抵抗を減らす
  6. 冷却システムを見直す
  7. 固定側の研磨を荒くしておく
  8. 加工を見直す
  9. 樹脂ごとに必要な抜き勾配を確認する

の9つです。

キャビ取られとは

おそらく問題ないと思いますが、認識を統一するために言葉の定義をしておきます。

キャビ取られとは、金型を開いたときに、固定側に成形品がとられてしまう現象です。

「トラレ」や「キャビトラレ」などと表現されることもありますが、この記事ではキャビ取られで統一します。

また、キャビ取られの何がいけないかというと、成形品や金型の破損につながることです。

成形品一つだけならまだしも(いや、嫌ですけどもね)、金型が破損したらそれこそ結構な損害ですからね。

ちなみに、キャビ側とは金型の固定側、コア側とは可動側を指します。

PLをキャビ側に寄せる

PLとは、パーティングラインの略で、金型の可動側と固定側の境界線です。つまり、金型が開く位置ということです。

このPLをキャビ側に寄せれば、成形品の半分以上はコア側にあることになるので、キャビ取られが起こりにくくなります。

金型設計段階でないと難しいですが、キャビ取られ対策には有効な手段のひとつです。

成形品のコア側の溝を深くする

成形品を設計するときに、キャビ取られ対策を先にしておこうという考え方です。

溝がある成形品であれば、溝のうち、コア側の溝を深くしておくという方法です。

こうすることで、コア側の抵抗が大きくなるので、キャビ取られが起こりにくくなります。

リブをコア側につける

リブとは、簡単に言えば、成形品の補強の役割を持つ部分です。

この構造を作るときには、極力コア側につけましょう。

わざわざキャビ側につける意味はないですからね。

キャビ側にスプリングを入れる

これは物理的にキャビ側から成形品を押してしまおうという考え方です。

キャビ側にスプリングが入っているので、型開の時にスプリングが押し出してくれるので、キャビ側の抵抗が緩和します。

こうすることでキャビ取られを防ごうというわけです。

可動側の抵抗を減らす

キャビ取られの原因として、「コア側への形状の掘り込み量がキャビ側の形状の掘り込み量よりも小さいまたは同程度である」という可能性があります。

要するに、掘り込み量が コア側≦キャビ側 という状態になっているのです。

こうなっていると、キャビ側の抵抗の方が大きくなってキャビ取られが起こりやすいことが想像しやすいと思います。

ですので、コア側の掘り込み量を増やす等でコア側の抵抗を増やせば、キャビ取られの対策に十分なりえます。

冷却システムを見直す

キャビ取られの原因のひとつに、キャビ側の冷却システムに問題があるケースもあります。

例えば、コア側には温調システムがついているが、キャビ側にはついていない、などの場合がそれにあたります。

冷却効率に差が生じてしまう、具体的にはキャビ側が冷えすぎてしまうことで、キャビ側に成形品がとられてしまうのです。

ですので、冷却回路を確認したり、冷却システムそのものを見直したりする必要があるかもしれません。

大がかりな作業になってしまいますが、今後の成形品のために一度見直すと良いですね。

固定側の研磨を荒くしておく

金型を最後研磨してきれいにすると思いますが、ここであえてコア側の研磨の番手を落としておくという方法もあります。

シンプルに考えれば、コア側の抵抗が少ないのでキャビ側に成形品がとられてしまっているのです。

ですから、コア側の抵抗を大きくしてしまおうというわけです。

もちろん、転写される可能性も十分にありますので、あまりにも研磨の番手を落としすぎると、外観NGになることも十分考えられるので、そのあたりは慎重に見極めてください。

金型の加工を見直す

あまりイメージしにくいと思いますが、花王不具合などの金型の加工に問題があるケースもないわけではありません。

すべての射出成形の作業者が、金型まで設計できるわけではないので、金型の設計ができる人も交えて相談してみるのがよいでしょう。

樹脂ごとに必要な条件を確認する

樹脂によって必要になる抜き勾配が変わってきます。

この抜き勾配を考慮されていない金型ではキャビ取られが起こりやすくなってしまいます。

また、射出圧力のかけすぎや表面の外観などのその他の品質を優先した条件だとキャビ取られが起こりやすくなるケースがあります。

私の場合、射出圧力ではありませんが、保圧をかけすぎた結果、キャビ取られが起こりました。

その時は十分に樹脂を充填させようとした味見実験だったのですが、見事に取られてしまい驚きました。

この瞬間、圧力のかけすぎを瞬時に疑えなかったので私もまだまだ修行が足りませんね。

キャビ取られが発生しにくい形状を選択する

キャビ取られが発生しやすい形状というものがあります。

具体的には、

  1. 左右対称の形状
  2. コア側への抵抗をつけにくい形状

です。

このような成形品はある程度仕方がないですが、設計段階でこれらを変更することが可能でしたら、キャビ取られが起こりにくい形状にしておくことが無難です。

スプルーがびっちりキャビ側に詰まってしまうとなかなか取り出すのも大変ですからね…。

まとめ

今回はキャビ取られの対策について紹介しました。

射出成形では、この不良の原因はこれ、といった形ではなく、かなり多くの可能性が考えられるので複数の引き出しを持っておくと安心ですね。

今後の作業でもキャビ取られに遭遇する場面があるかと思いますが、今回紹介したものをひとつひとつ試していけば、解決できると思います。

皆さんの考察の一助になれば幸いです。

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