射出成形の黒点の原因はこれ!メカニズムと具体的な対策まとめ!

射出成形

射出成形の中で最もよくある不良の一つに黒点がありますね。なんでこんなところにこんな点が…というシーン、ありますよね、きっと。

不良率が高くなってしまいやすい不良であるので、しっかりとした対策で根本原因を解決する必要があります。

この記事では、射出成形の黒点の原因をメカニズムから具体的な対策をまとめています。

射出成形の黒点の原因【メカニズム編】

黒点の原因は端的にいえば、不純物が成形品に混ざることです。ですが、どこで不純物が混ざるか、で対策は大きく変わってきます。そして、そういった対策はメカニズムの理解があってこそ意味がある対策になるのです。

「使わない」のと「使えない」のは別物、みたいなやつですね。

まずは、黒点について簡単にまとめておきます。

射出成形での黒点について

黒点は不純物が混ざりこむ不良です。最も不良率の高い不良といえます。

ここで言う不純物は、パージ剤の残りや、炭化した樹脂、その他のゴミなどを指します。

炭化物になりきらなくても、その前段階の酸化物などは、黄色や褐色のものが多いのですが、それらも不純物に含まれます。

要するに、母材と異なる色や物質と考えてもらえれば大丈夫です。

黒点はPC、PMMA、PE、フッ素樹脂などで特に起こりやすいといわれています。

黒点発生のメカニズム

明らかに成形で関係のない物質は工場内のどこかから紛れ込んだゴミとして、ご理解いただけると思いますので、その他の炭化物等について説明します。

シリンダー内にあるスクリューは、その周りは安定被膜でおおわれています。

しかし、異常過熱だったり、ガラスが多量の樹脂を長時間滞留させたりすることで、その安定被膜が破れてしまいます。安定被膜が破れたところで樹脂の炭化が起こります。

炭化が始まった樹脂はスクリュー内にとどまり、成長を続けます。

そしてそれが大きくなると、樹脂の流れに逆らえず、一部が削れたり壊れたりします。

つまり、分離して樹脂の流れに乗ってしまうというわけです。それが成形品に入ると黒点となってしまいます。

この炭化物はまた成長し、大きくなったらはがれる、ということを繰り返すため、一度発生したら周期的に発生します。

これが、最も不良率の高い不良といわれるゆえんですね。

ちなみに、はがれた炭化物がシリンダー内で混練されると黒条(ブラックストリーク)になります。

射出成形の黒点の原因と具体的な対策集

黒点は、黒点となる不純物によって、または場所によって対策が異なります。

まずは、黒点の原因となる不純物別に、その次に場所別に対策を解説していきます。

黒点の原因となる不純物別の対策

まずは、不純物別で紹介します。

母材と異なる樹脂、炭化物、金属の3つの視点で紹介します。

① 母材と異なる樹脂

母材と異なる樹脂が原因となると、可能性としては2つです。

①-1 前の樹脂

1つ目の可能性としては、その樹脂の前に成形していた樹脂が残っている可能性です。

気づかずに残っていたということはよくある話なんです。私も、掃除したつもりで、「こんなとこにもいたのか…」ということは少なくないです。

具体的には、小さな隙間、滞留しそうな場所、水分が付着していそうな場所、静電気が発生しそうな場所、ホース等の樹脂の搬送経路を疑い、掃除または公館で対応してください。

①-2 その他

2つ目は、ホース等が由来の樹脂です。

ペレット状の樹脂を搬送するときに、ホース等の内壁にぶつかってその衝撃でホース等の樹脂がはがれてしまうことがあります。ホースだけでなく、パッキンなども疑ってみてください。

この場合は、丈夫なものに交換することをおすすめします。

② 炭化物

前述のとおり、炭化物の可能性が上げられます。

こうなったら、可塑化ユニットの清掃しかありません。

洗浄剤での洗浄、それでだめなら潔く分解しましょう。

③ 金属

金属が不純物として混入する場合は、3つの可能性が考えられます。

③-1 材料搬送経路

前述の①-2でお伝えしたのは、ホース等の樹脂ですが、それの金属バージョンとお考え下さい。

ペレット状の樹脂が衝突する際にSUS部品が削れてしまい、成形品に入り込んでしまうのです。

この場合の対策は、金属部品の光沢や傷の違いで場所を特定し、その部品を交換しましょう。

③-2 鋳物部品から

③-1と同じような理由ですが、成形機本体やホッパー等の鋳物部品からくるものです。

隙間や段差、角などに注意です。

触ってみたり、目視したり、ファイバースコープで確認したりして、まずは場所の特定をしましょう。

その後は、場所によってはメーカーに相談してみてください。

③-3 再生材料

いわゆる、「リペレ」を行った場合に考えられる不純物です。

これは成形機ではなく、リペレで使った粉砕機に問題がある可能性があります。

粉砕機由来の金属が混入したことが考えられます。

この場合は粉砕機を確認して異常がないことを確かめてください。

黒点の原因となる場所別の対策

続いて場所別の対策を紹介します。

場所別は、ペレット(材料)、金型、作業環境の3つの観点で紹介します。

① ペレット(材料)

材料に問題がある場合は、まずするべきことは切り分けです。

前工程で混入したのか、そうでないのかが重要です。

どこで混入したかをはっきりさせ、そこでの根本原因を取り除けば解決です。

② 金型

金型にはオイルやグリス、樹脂の添加物、管理が悪ければさびなどが付着していると考えられます。

ですので、そういった場合は金型の清掃が必須です。

理想的には、そうなる前に日常的に金型のメンテナンスを実施することを強くおすすめします。

③ 作業環境

5Sしましょう。

これ以上はありません。

5Sしましょう(私も他人のこと言えませんが)。

射出成形の黒点の特定までの手順

最後に、どのように原因を特定するかを紹介します。

流れとしては、現状確認→分析→特定で減少を把握し、対策をしていきましょう

Step.1 現状確認

まずは、今の状態を確認しましょう。

発生率は何%か、ランダムに発生するのかや成形品の中での発生場所のような発生傾向、どの工程で見つかったのかといった発見工程などです。

こういったことをまずは整理していきましょう。

Step.2 分析

顕微鏡等を使って確認しましょう。

肉眼では0.07~0.1 mm程度が限界なので、微妙に光っているところや周りと異なる場所等をよく観察してください。

成形品の中でどこに黒点があるかを発見してください。

Step.3 特定

最後は不純物が一体何なのかの特定です。

これに関しては、得意な分析手法で、樹脂等に適していればなんでもいいです。

FT-IR(赤外分光分析)がよく使われる手法です。

不純物が何なのかを特定しましょう。

そうすれば、自然とこれまでお伝えしてきた対策のうち、どれを選ぶかが見えてきます。

まとめ

この記事では、射出成形の黒点について焦点を当てて紹介しました。

不良率が高くなりやすく、周期的に起こりやすいので、根本から解決したいところです。

メカニズムをご理解いただければ、するべき対策やしなくていい対策もわかってもらえるはずです。

この記事を参考に少しでも不良を減らせることを期待しています。

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