成形業務の技術者、オペレーターのみなさん、いつもお疲れ様です!
新しい金型、新しい樹脂を使うとき、成形条件を一から出さなければいけないので結構大変ですよね。
特に量産ではなく開発関係で様々な樹脂を扱うとなると条件出しの頻度もぐっとあがるかと思います。
はい、私もその一人です。
どのパラメータも気を遣うことがたくさんですが、この記事では冷却時間にフォーカスしましょう。
今回は、射出成形での冷却時間の計算方法を紹介します。
射出成形での冷却時間計算のための理論式はこれ!
一言で「冷却時間」といっても、実は一つではないんです。
成形品の肉厚部に注目したり、中心部に注目したりといった具合にいろいろありそうなのは想像できそうですよね。
もちろん、ご想像の通り、成形品の形で変わってきます。
これだけ知ってりゃ良し!みたいな式があればぜひとも紹介したいのですがなかなか💦
射出成形での冷却時間計算式
今回は、成形品の中心部の冷却時間の理論式をお伝えしますね。
あまり引っ張ってもあれなので、理論式はこちらです!
どうですか?
ぶっちゃけ、思ったより複雑ですよね(笑)
もっと簡単な式だと思った、というのが私の正直な感想ですが、一つ一つ分解していけば、そんなに難しくないので、ここであきらめないでください。
射出成形の冷却時間計算式の使い方
個人的には、きちんと仕組みが分かった上で使うのが本来あるべき姿だと思います。
とはいえ、そうも言っていられない状況もありますよね、わかります。
ですので、簡単な使い方を紹介しておきますね。
ABS樹脂で成形品の肉厚が2 mmの場合、中心部の冷却に必要な冷却時間は?
ただし、キャビティ表面温度は60℃、溶融樹脂温度は230℃、成形品取り出し温度は90℃とする。
上記の公式に代入すればOKです。
関数電卓で計算してみてください。
また、計算してくれるサイトもありますが、冷却時間の定義によっても変わってくるので、何を求めているかを意識するようにしてくださいね。
射出成形での冷却時間計算のための理論式のキャビティ表面温度
ここで式をよく見てみましょう。
困った奴いませんか?
成形品の肉厚(s)はそれぞれの金型(成形品)の図面を見れば一発ですよね。
熱拡散率(α)等の物性値(熱伝導率(λ)や比熱(c)、密度(ρ))は樹脂固有なので文献や技術資料で調べれば解決です。
溶融樹脂温度(θr)と成形品取出温度(θe)も成形条件として設定するのでこちらも問題ないですよね。
自分で決める値ですからね。
もうお分かりいただけました?
そうです、キャビティ表面温度です。
こいつ、何者⁉って感じですよね。
こいつについてもう少し詳しく見ていきましょう。
射出成形の冷却時間計算で必要な数値
キャビティ表面温度は以下の式で導出できます。
ここでも出てきましたね、はじめましての数値が。
それがキャビティの熱浸透率Pmと樹脂の熱浸透率Prです。
それぞれ以下のように求めることができます。
これらの意味するところは「どのくらい熱を受け取りやすいか」ということです。
高温の溶融樹脂が流れ込み、かつ、冷却温度で金型の温度がキープされようとしている状態で、熱の移動が活発に起こったときに、キャビティの表面はどのくらいの温度になるかを考えたものです。
射出成形の冷却時間は計算だけでは解決させない!
冷却時間はサイクルタイムに大きな影響を与えます。
サイクルタイムに大きな影響を与えるということは、タクトに直接関係し、最終的には製品のコストに直結する非常に重要なファクターです。
釈迦に説法かと思いますが、そうですよね。
ですので、冷却時間を短くすることの意味は会社の利益に直結するんです。
この1秒、2秒は大きいですよね。
しかし、この式で得られた時間だけ冷却すればいい、というわけではありません。
今回紹介したものはあくまでも理論値です。
そうです、理論値なんです。
こう言っては何ですが、このようなシンプルな式では加味されていないものもあるんです。
例えば、形状に関する項は厚さ以外含まれていませんし、スプルーやゲート、ランナーの形状でも異なってきます。
何が言いたいかというと、計算で終わりにせず成形品も見よ!ということです。
計算は確かに大切です。
余計な時間をかけるのはもったいないですからね。
しかし、実際に成形したものをちゃんと見てください。
反るのであれば長くしなければいけないし、全く問題ないのであれば短くもできるかもしれませんよね。
ですので、計算は計算、ものはもので見るようにしてください。
もし、もっと正確に予測したければ、微分方程式を立てて計算してみてください。
射出成形の冷却時間計算方法のまとめ
今回は冷却時間の理論値を紹介しました。
成形品の中心部の冷却時間の求め方はご理解いただけたと思います。
しかし、計算は計算として、必ず成形品を見て条件は確定させてくださいね。