射出成形ビギナーの皆さん、こんにちは!
一度成形するまでに、非常に多くの用語・設定で面食らっていることかと思います。
今回のテーマは「デコンプ」です。
お初にお目にかかりますの方もいるかもしれませんが、非常に重要です。
これが原因で白化やシルバーストリークが発生してしまう可能性もあるんです。
この記事では、デコンプとは何かという内容から始まり、起こりうる不良とその対策方法を解説していきます。
今知らないことは全く問題にならないので、一緒にレベルアップしていきましょう。
射出成形のデコンプとは
早速ですが、デコンプについて端的にお伝えします。
デコンプとは、保圧や計量が終わった後に、スクリューを回転させずに後退させる動作のことです。
デコンプレッションの略称としてデコンプと呼ばれています。
ん?これサックバックのことじゃないの?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、デコンプ=サックバックという認識でOKです。
私の感覚ですが、サックバックと表記されているテキストが多いのでデコンプはあまり目にしないかもしれません。
デコンプの目的は、ノズル先端の樹脂圧力を下げることです。
計量終了時や保圧終了時はノズル先端の樹脂の圧力が高くなっている状態です。
その状態ではノズル先端から樹脂が垂れてしまうたれ落ち、鼻タレ、ドローリングなどと呼ばれる現象が起こります。
要するに、圧力が高いままだと樹脂が垂れるから、ちょっとスクリューを後ろに下げて樹脂圧力を下げてしまおう、というわけです。
デコンプに関連する不良
デコンプに関連する不良についても紹介していきます。
主な視点としては、デコンプしなかったことによる不良とデコンプしすぎたことによる不良があります。
ここで紹介する内容はすべての樹脂にまったく同じように起こるわけではないので、ご使用になられる樹脂の特性も考慮しながら活用していただければと思います。
たれ落ち、鼻タレ、ドローリング
これはデコンプをしなかったために起こる現象です。
お伝えした通り、樹脂圧力が高い状態のままなので、そこからたれ落ちてしまうのです。
対策としては、適正量のデコンプを実施することです。
通常のデコンプは3 mm程度です。
糸引き
これもデコンプを行わなかったために起こる不良です。
成形が終わると型を開いて成形品を取り出します。その時にスプルーから糸のように樹脂が伸びてしまう現象が起こることがあります。
糸引きの原因のひとつは、デコンプをしないために、ノズル先端の樹脂圧力が高いままになり、樹脂が垂れる代わりにスプルーから切り離せないような状態になることです。
対策は適正なデコンプ量を設定してデコンプすることですね。
しかし、糸引きに関してはデコンプだけが原因ではなく、ノズル先端の温度なども考えられるため、デコンプ以外も視野に入れて考えてください。
シルバーストリーク(銀条)
シルバーや銀条と呼ばれる外観不良は、樹脂の流れ方向にキラキラした筋のような模様が発生してしまう現象です。
これは、デコンプをしすぎたときに起こりうる不良です。デコンプをしすぎるということは、スクリューを後退させすぎるということです。
スクリューを後退させすぎた場合、空気が巻き込まれてしまいます。
樹脂の乾燥不足で水分が含まれていたり揮発性のガスが発生したりするとそれが原因でシルバーが出てしまいますが、それと同様なメカニズムでシルバーが発生します。
樹脂由来で水分やガスが巻き込まれるか、デコンプのし過ぎで空気が巻き込まれるかといった違いでシルバー発生の仕組みは同じということです。
シルバーの対策では樹脂の乾燥不足を先に疑うと思いますが、その他の手を尽くしてもうまくいかなければデコンプ量を調整してみてください。
まとめ
今回はデコンプについて解説しました。
デコンプ(デコンプレッション)はサックバックと同じ意味で、軽量後や保圧後にスクリューを回転させずに少し後退させる動作のことです。
ノズル先端の樹脂圧力を下げりために行います。
基礎的な部分にはなりますが、デコンプ量が適切でないと不良が発生してしまうので、まずは一般的な3 mm程度の設定で成形し、その後必要に応じて調整してみてください。